資格を10個持っていても、担当工程が監視・運用のままなら、この記事で使う推定年収は変わりません。
- CCNAを取った
- クラウド資格も取った
- 次はネットワークスペシャリストを考えている
それでも給与が変わらないと、「資格を取る意味はあるのか」と感じます。
ただ、ここで見るべきなのは資格の数ではありません。
インフラエンジニアの年収を大きく動かしているのは、何の資格を持っているかより、どの工程を担当しているかです。
資格には意味があります。
ただし、資格そのものが年収を上げるわけではありません。
資格が強く効くのは、監視・運用から構築へ、構築から設計へと、担当工程を一段上げるための材料として使ったときです。
この記事では、「資格を取ったのに給料が変わらない」という状態から、次に何をすべきかを整理します。
資格を取っても年収が変わらないのはなぜか
資格だけによる年収差は、保有者の平均では分からない
まず押さえておきたいのは、資格を取ったことで年収がどれだけ上がるかを直接示す、信頼できる統計はほとんどないということです。
たとえば、「CCNAを取れば年収が上がる」「ネットワークスペシャリストを取れば年収が上がる」と断定できる公的データはありません。
もちろん、資格を評価する会社はあります。
採用要件や社内のスキル基準に資格が含まれることもあります。
ただし、それと「資格を取得した結果、年収が上がった」は別の話です。
資格を持っている人のほうが年収が高かったとしても、それだけでは資格が原因とは言えません。
その人がすでに構築や設計を担当している可能性があるからです。
ここを分けずに考えると、「年収を上げるために、とにかく資格を増やそう」という結論になりやすくなります。
しかし、資格の取得数だけを増やしても、担当する仕事が変わらなければ、評価される役割も大きくは変わりません。
資格保有者の年収差には「経験年数」と「担当工程」が混ざっている
資格と年収の関係が分かりにくい理由は、資格保有者の中にさまざまな人が混ざっているからです。
同じCCNA保有者でも、
- 監視を担当している人
- ネットワーク機器の構築を担当している人
- 設計書を作成している人
がいます。
同じネットワークスペシャリスト保有者でも、日々の運用を担当している人と、要件整理や設計を担当している人では、業務の責任範囲が違います。
年収差が生まれているとき、資格だけでなく、経験年数や担当工程まで一緒に変わっていることが多いのです。
そのため、「この資格を持つ人は年収が高い」という情報だけを見ても、それが資格による差なのか、担当工程による差なのかは判断できません。
インフラエンジニアの場合は、とくにこの区別が重要です。
監視、運用、構築、設計では、求められる判断の範囲が大きく異なるからです。
資格手当は会社の制度であり、市場価値とは別
資格手当がある会社もあります。
ただし、それは各社の人事制度です。
ある資格を取得したときに社内制度上の評価が変わることと、外部から見たエンジニアとしての評価が変わることは同じではありません。
たとえば、資格を取得しても、担当業務が監視のままであれば、実務として証明できるのは監視業務です。
一方で、資格取得後に構築作業へ参加し、機器設定やテスト、手順書作成まで担当できれば、実務として説明できる範囲が増えます。
資格そのものより、その後に何を担当したかが重要です。
資格はゴールではなく、担当工程を変えるきっかけとして使うほうが価値を出しやすくなります。
年収を動かしているのは、担当している工程
whoamiでは、doda「平均年収ランキング2025」の職種別×年代別データをもとに、ネットワーク・インフラエンジニアの業務を5つの工程へ再編しています。
推定基準額は以下のとおりです。

職種別・年代別データ(2024年9月〜2025年8月・約60万人)を、whoamiが工程区分へ対応させています。工程別の担当者を直接調査した統計ではなく、勤務地・企業規模などの補正前の推定基準額です。工程間の差は個人の昇給額を保証しません。
表の数値をテキストで確認する
| 工程 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
|---|---|---|---|---|
| 監視・運用 | 350 | 441 | 552 | 630 |
| 構築(ネットワーク) | 396 | 519 | 658 | 756 |
| 構築(サーバ) | 411 | 520 | 664 | 664 |
| 設計・上流 | 439 | 594 | 723 | 851 |
| アーキテクト・SRE・PM | 517 | 705 | 855 | 867 |
出典:doda「平均年収ランキング2025」(2024年9月〜2025年8月・約60万人)の職種別×年代別データを、whoamiが5つの工程区分へ再編したもの。
この表を見ると、同じ年代でも工程によって数字が変わっていることが分かります。
30代では、監視・運用が441万円です。
構築(ネットワーク)は519万円で、差は+78万円。
構築(サーバ)は520万円で、差は+79万円です。
さらに、ネットワーク構築と設計・上流を比べると、30代の推定基準額には75万円の差があります。
ここで重要なのは、資格欄がないことです。
推定年収を分けているのは、CCNAを持っているかどうかではなく、監視・運用を担当しているのか、構築を担当しているのか、設計まで担当しているのかです。
工程による年収差については、インフラエンジニアの年収は工程で決まる|年代別の相場と上げ方でも詳しく整理しています。
資格を考えるときも、この順番で見ると分かりやすくなります。
「資格を取れば年収が上がるか」ではありません。
「その資格を使って、次の工程を担当できるか」です。
なお、クラウドについても同じです。
whoamiの算出では、クラウドの実務経験がある場合に+10.0%の補正を使っています。
ここで見ているのは資格ではありません。
業務としてクラウド環境を扱った経験です。
自分の条件ではどの程度になるのか確認したい場合は、年収診断で確認できます。資格名そのものを金額へ直接加算する仕組みにはしていません。
それでも資格が効く場面がある
ここまで読むと、「では資格は取らなくていいのか」と思うかもしれません。
そうではありません。
資格は、まだ担当したことがない仕事へ入るときに強く効きます。
たとえば、監視・運用を担当している人が、ネットワーク構築をやりたいとします。
しかし、その人に構築経験がなければ、「この人に設定変更を任せてよいか」を判断する材料がありません。
そこでCCNAやCCNPが役立ちます。
ルーティング、スイッチング、VLAN、STP、OSPF、ACLなど、構築業務に必要な基礎知識を学んでいることを示せます。
資格があれば、実務経験がなくても知識の土台があることは伝えられます。
ただし、資格だけでは十分ではありません。
実際の業務では、コマンドを知っているだけでなく、作業前後の確認、設定差分、疎通確認、切り戻し、試験結果の記録まで必要です。
だから資格を取った後は、その知識を使った成果物を残すことが重要です。
ネットワークなら、
- 構成図
- パラメータシート
- 作業手順書
- 試験項目書
- 設定差分
などです。
サーバなら、
- 構築手順
- 設定ファイル
- 監視項目
- バックアップ手順
- 復旧手順
などです。
クラウドなら、
- 構成図
- 権限設計
- 監視設定
- ネットワーク設定
- 復旧手順
などです。
資格は、試験が対象とする知識を学んだことを伝える材料です。
成果物では、作成した内容と担当した範囲を具体的に示します。
この2つがつながると、資格の価値が一気に実務寄りになります。
運用から構築へ移るときに、どのような実績を残せばよいかは、インフラエンジニアの運用から構築へ|キャリアアップの実践法で具体的に整理しています。
社内で構築作業の一部を任せてもらう方法もあります。
既存環境の設定変更、機器更改の補助、試験、手順書修正などから担当範囲を広げる方法です。
資格は、その入口を作る材料になります。
持っている資格の系統で、次に進む工程が変わる
監視・運用から構築へ進むといっても、移り先は一つではありません。
今持っている資格によって、自然につなげやすい工程が変わります。
CCNA・CCNP・CCIE・ネットワークスペシャリストは「ネットワーク構築」につなげる
CCNA、CCNP、CCIE、ネットワークスペシャリストを学んでいるなら、まずネットワーク構築へつなげるのが分かりやすい流れです。
たとえば、普段の業務がアラート監視や一次切り分け中心でも、ネットワークの知識があれば、次に担当したい作業を具体化できます。
- スイッチの設定変更
- VLAN追加
- ルーティング設定
- ACL変更
- 機器交換
- 疎通試験
- コンフィグ取得
- 作業前後の比較
こうした業務です。
ここで大切なのは、「CCNAを持っています」で止めないことです。
「VLANとSTPを学んだので、スイッチ設定変更と試験まで担当した」
「OSPFを学んだので、構成を読み、変更後の経路確認まで行った」
という形まで持っていくと、資格と実務がつながります。
ネットワークスペシャリストも同じです。
試験で扱うネットワーク設計、可用性、セキュリティ、性能などの考え方は、設計工程へ近づくときに使えます。
資格名を増やすことより、その知識をどの業務へ接続するかが重要です。
LPIC・LinuC・RHCSA・クラウド系資格は「サーバ・クラウド構築」につなげる
LPIC、LinuC、RHCSAを学んでいるなら、Linuxサーバの構築へつなげやすくなります。
- ユーザー管理
- 権限設定
- サービス設定
- ログ確認
- ストレージ設定
- ネットワーク設定
- 障害時の切り分け
こうした作業は、運用でも触れることがあります。
そこから一歩進めて、サーバを作る側へ担当範囲を広げます。
AWS、Azure、GCPなどのクラウド資格も考え方は同じです。
資格を持っているだけでは、クラウドの実務経験にはなりません。
業務として、構成、権限、監視、復旧などのどこを担当したかが重要です。
VMwareやKubernetesも同様です。
製品知識があることと、本番環境の設計・構築・運用を担当したことは分けて考える必要があります。
個人環境で検証した内容は無駄ではありません。
構成を作り、設定し、壊し、復旧まで試した記録は学習実績になります。
ただし、業務経験として扱うのではなく、個人検証として整理したほうが正確です。
工程別・資格の使いどころ
監視・運用にいる人は、資格を「構築を任せてもらう材料」にする
監視・運用にいる人が最初にやるべきことは、資格を増やすことではありません。
今持っている資格の知識を、構築作業へ接続することです。
- CCNAを持っているなら、ネットワーク機器の設定変更や試験
- Linux系資格を持っているなら、サーバの初期設定、ユーザー設定、サービス設定
- クラウド資格を持っているなら、クラウド環境の構成変更、権限設定、監視設定、バックアップや復旧作業
最初から設計全体を担当する必要はありません。
一部の作業でも構いません。
大切なのは、「監視した」から「変更した」「構築した」「試験した」へ、動詞を変えることです。
そのうえで成果物を残します。
- 作業手順書
- 設定差分
- 試験結果
- 構成図
- パラメータシート
こうした資料が残れば、資格の知識を業務で使ったことを説明しやすくなります。
構築にいる人は、資格を「設計に必要な判断力の証明」に使う
すでに構築を担当しているなら、次に見るべきは設計です。
構築では、決められたパラメータを正しく反映する力が必要です。
設計では、そのパラメータをなぜそうするのかを決める力が必要になります。
ネットワークなら、
- 冗長化方式
- ルーティング方式
- セグメント設計
- アクセス制御
などです。
サーバなら、
- 可用性
- 容量
- バックアップ
- 監視
- 権限
などを決めます。
この段階では、CCNPやネットワークスペシャリストの知識が使いやすくなります。
セキュリティを含む設計なら、情報処理安全確保支援士で学ぶ考え方も接続できます。
Linux系では、LPIC-3のような上位資格で扱う内容を、設計判断と結びつけることができます。
重要なのは、資格を取ったことではありません。
設計書に何を書いたかです。
- 構成をどう決めたか
- なぜその方式にしたか
- 障害時にどう切り替わるか
- どの条件で復旧するか
こうした判断を説明できるようになると、構築経験から設計経験へ変わっていきます。
設計を目指す人は、資格と設計成果物をセットで残す
設計を目指すなら、資格だけを増やすより、設計成果物を意識したほうが効果的です。
- ネットワーク:論理構成図、物理構成図、IPアドレス設計、VLAN設計、ルーティング設計、冗長化設計
- サーバ:サーバ構成、ストレージ、バックアップ、監視、認証、権限
- セキュリティ:通信制御、認証方式、ログ管理、権限分離
ネットワークスペシャリスト、情報処理安全確保支援士、CCNP、LPIC-3などは、この段階で使いやすい資格です。
なぜなら、単なる操作方法ではなく、「なぜこの構成にするのか」を考える領域が増えるからです。
ただし、試験問題を解けることと、設計できることは同じではありません。
- 学んだ知識を使って設計書を作る
- 既存の設計書を読み、判断理由を理解する
- 構築時に設計者へ確認した内容を記録する
- レビューで指摘された点を残す
こうした実務の積み重ねによって、資格の知識が設計経験へ変わります。
資格を取る前に決めておくこと
次の資格を探す前に、一つ決めてください。
次にどの工程を担当したいかです。
- 監視・運用からネットワーク構築へ進みたいのか
- サーバ構築へ進みたいのか
- 構築から設計へ進みたいのか
ここが決まれば、必要な資格はかなり絞れます。
順番は次のように考えます。
- 次に担当したい工程を決める
- その工程で作る成果物を確認する
- その成果物を作るために必要な知識を洗い出す
- そのあとで資格を選ぶ
ネットワーク構築なら、構成図、パラメータシート、手順書、試験結果などです。
サーバ構築なら、構築手順、設定内容、監視設定、バックアップ設定などです。
設計なら、基本設計書、詳細設計書、構成図、方式設計などが中心になります。
その成果物を作るために必要な知識を洗い出します。
そのあとで資格を選びます。
- ネットワーク構築へ行きたいなら、ネットワーク系資格
- Linuxサーバ構築なら、Linux系資格
- クラウド構築なら、クラウド系資格
- 設計へ進むなら、より広い技術判断を扱う資格
この順番を逆にすると、「資格は増えたけれど仕事は変わらない」という状態になりやすくなります。
先に資格一覧を眺めて、難しそうなものから選ぶ必要はありません。
欲しいのは資格そのものではなく、次の工程を担当するために必要な知識です。
資格は、その知識を体系的に身につけたことを示す手段として使います。
よくある質問
CCNAを取れば年収は上がりますか?
CCNAを取っただけで年収が上がるとは言えません。
CCNAを取得しても、担当工程が監視・運用のままであれば、推定年収の基準となる工程は変わらないからです。
一方で、CCNAの知識を使ってネットワーク機器の設定変更、構築、試験などを担当できるようになれば、構築工程へ近づきます。
CCNAは年収を直接上げる資格というより、ネットワーク構築へ入るための材料として使うと効果を出しやすい資格です。
ネットワークスペシャリストは年収アップに意味がありますか?
意味はあります。
ただし、資格名だけで年収が上がるという意味ではありません。
ネットワークスペシャリストで扱う設計、可用性、性能、セキュリティなどの知識を、構築から設計へ進むために使うことが重要です。
たとえば、構成図を作る、冗長化方式を考える、IPアドレスやルーティングを設計するといった業務につながれば、資格の知識が担当工程の変化につながります。
インフラエンジニアに資格は意味ないのでしょうか?
意味があります。
とくに、まだ経験していない工程へ進みたいときに使えます。
実務経験がない領域では、「何を知っているのか」を判断する材料が少ないからです。
資格があれば、一定範囲の知識を体系的に学んでいることを示せます。
ただし、資格取得で終わらず、その知識を設定変更、構築、試験、設計などの業務へつなげることが重要です。
「資格か実務か」の二択ではありません。
資格を使って実務の担当範囲を広げる、という順番で考えるのが現実的です。
クラウド資格を持っていれば、クラウドの実務経験があると見なされますか?
見なされません。
資格と実務経験は別です。
クラウド資格は、そのサービスや設計思想について知識があることを示す材料になります。
一方、実務経験として見られるのは、業務として何を担当したかです。
- 構成を作ったのか
- 権限を設定したのか
- 監視を設定したのか
- 障害時の復旧を担当したのか
こうした担当範囲が実務経験になります。
個人でクラウド環境を作り、検証することにも意味があります。
ただし、それは学習実績として記載し、業務経験とは分けたほうが正確です。
whoamiの年収推定でも、+10.0%の補正対象としているのはクラウド資格ではなく、クラウドの実務経験です。
同じ系統の資格を何個も取る意味はありますか?
知識を深める目的なら意味があります。
ただし、担当工程が変わらないまま資格だけを増やしても、この記事で使っている推定年収は変わりません。
重要なのは資格の数ではなく、その知識を使って何を作ったかです。
CCNAの次に別のネットワーク資格を取ること自体が問題なのではありません。
次の資格によって、構築や設計で必要な知識が補えるなら意味があります。
一方で、資格を増やすこと自体が目的になっているなら、一度工程から逆算したほうがよいです。
次に担当したい工程で必要な知識は何か。
その知識を学ぶために、どの資格が合っているか。
この順番で選ぶと、資格を実務へつなげやすくなります。
資格を取ったのに年収が変わらず、「自分の場合はどこがボトルネックなのか」を確認したい場合は、現在の担当工程から年収の目安を確認できます。ここでも資格名そのものを金額へ直接加算していません。
まとめ
資格そのものが年収を上げるわけではありません。資格が効くのは、その知識を使って担当工程を一段上げたときです。
明日やることは一つです。次に担当したい工程を「ネットワーク構築」「サーバ構築」「設計」のどれか一つに決めてください。 そのあとで、必要な資格を逆算すると、次に学ぶべきものが見えやすくなります。


コメント
コメント一覧 (4件)
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