案件が変わっても、資格を取っても、給与がほとんど変わらない。SESで働いていると、「会社の仕組みなのか、自分の経験が足りないのか」と判断に迷うことがあります。
そのとき、最初から「SESだから仕方がない」と決める必要はありません。確認したいのは、担当工程、案件単価、自社の給与制度です。
仕事の範囲が変わっていないのか。役割は増えたのに契約条件が変わっていないのか。それとも、自社への売上は増えたのに給与へ反映されていないのか。似ているようで、確認すべき相手と資料が違います。
年収を考えるなら、「どんな会社へ移るか」より先に、今の仕事がどのように評価されているかを確かめます。ここでは、SES企業に雇用されて働くインフラエンジニアを対象に、その確認方法を整理します。フリーランスの契約報酬とは分けて扱います。
SESで年収が上がらない理由を、工程・単価・評価に分ける
年収が変わらない理由を探すときは、「担当業務」「企業間の契約」「自社の人事評価」を別々に確認します。資格不足だけを疑っても、給与制度や案件の条件に原因があれば、疑問は解消しません。

年収が変わらないときは、「SESだから」で片づけず、担当工程・案件単価・評価制度の3つに分けて確認します。
担当工程が変わらず、任される範囲が広がっていない
監視案件を複数経験しても、担当する仕事がアラート確認と定型的な一次対応のままなら、案件名ほどには仕事内容が変わっていない場合があります。
反対に、同じ運用案件でも、原因調査、設定変更案の作成、復旧手順の改訂まで任されているなら、説明できる経験は増えています。案件数や在籍年数だけでなく、以前と今の担当範囲を比べてみてください。
役割が増えても、案件単価の見直しにつながっていない
この記事では、案件単価を「所属会社が企業間で取り決めた業務の対価」という意味で使います。従業員本人の給与とは別のものとして確認します。また、顧客が全体に支払う金額と、自分の所属会社が受け取る金額も区別が必要です。
たとえば、当初は定型作業だけだったのに、変更手順書の作成や障害対応の取りまとめまで担当するようになったとします。仕事内容の変化が、自社の担当者へ伝わっているかを確かめてください。
単価や役割が変わっても、給与への反映条件が分からない
自社への売上が増えることと、自分の給与が増えることは同じではありません。案件単価と給与を連動させる制度なのか、役割や等級で評価する制度なのかによって、確認する内容が変わります。
「頑張れば評価します」だけでは、次に何をすればよいか分かりません。どの実績が、どの評価項目に入り、いつ給与へ反映されるかまで聞くことが大切です。
SESの平均年収より、同年代・同工程の基準額を見る
自分の年収を比べるときは、SESという呼び方だけでまとめず、年齢と担当工程をそろえます。運用担当者と設計担当者を混ぜた平均では、自分の仕事に近い比較にならないためです。

職種別・年代別データ(2024年9月〜2025年8月・約60万人)を、whoamiが工程区分へ対応させています。工程別の担当者を直接調査した統計ではなく、勤務地・企業規模などの補正前の推定基準額です。工程間の差は個人の昇給額を保証しません。
30代の推定基準額(補正前)を工程別に比較。監視・運用とネットワーク構築では+78万円、ネットワーク構築と設計・上流では+75万円の差があります。
| 担当工程 | 30代の推定基準額 |
|---|---|
| 監視・運用 | 441万円 |
| 構築(ネットワーク) | 519万円 |
| 構築(サーバ) | 520万円 |
| 設計・上流 | 594万円 |
出典:doda「平均年収ランキング2025」。2024年9月〜2025年8月にdodaへ登録した約60万人の職種別・年代別データを、whoamiが工程区分に対応させたものです。勤務地や企業規模などの補正前の値です。
この表は、SES企業で働く人だけの平均年収ではありません。 また、構築担当者や設計担当者だけを抽出して調査したものでもありません。
「ネットワークエンジニア」をネットワーク構築、「IT戦略/システム企画」を設計・上流の基準として使っています。工程を考えるための推定値であり、工程だけの影響を測った統計ではありません。SESに限った平均年収や個人の昇給額とも区別してください。
年代別の全体像は、インフラエンジニアの年収は工程で決まる|年代別の相場と上げ方で確認できます。
大手の客先で働くことと、大手に所属することは違う
企業規模を見るときは、常駐先と所属会社を混同しないでください。whoamiの年収診断でも、従業員数は「常駐先ではなく、所属している会社」の人数を入力する仕様です。
診断モデルでは、従業員1,000人以上の場合に+13.1%の補正を使っています。ただし、これは試算のための調整値です。大手へ移れば給与が同じ割合で増えることや、SESに限った企業規模の差を示すものではありません。
商流が浅い、還元率が高い。それだけでは判断できない
商流や還元率は確認したい条件ですが、どちらも自分の仕事内容や給与の内訳とセットで見る必要があります。「直請けなら安心」「高還元なら年収が上がる」と、一つの言葉だけで結論を出さないことです。
商流と担当工程は、別の軸で見る
商流は、顧客から所属会社までの取引のつながりです。一方、工程は監視・運用、構築、設計といった仕事の区分です。
案件の説明を受けたら、顧客との間に入る会社数に加えて、自社が引き受ける業務範囲を確認します。そのうえで、自分が設定、試験、設計のどこを担当する予定なのかを聞いてください。
還元率は、何を含めているかを確認する
還元率を比較するなら、率の大きさより先に、その内訳を確認してください。基本給と賞与だけなのか、会社負担の社会保険料や交通費も含むのか。含める項目が違えば、同じ割合でも自分が受け取る給与は同じになりません。
年収が上がらないとき、会社に確認したいこと
「給与を上げてほしい」という希望だけでなく、確認したい事項を分けて伝えると、何が未確定なのかを整理できます。自社の上司や人事、案件を担当する営業など、社内の役割に合わせて確認先を選んでください。
| 確認すること | そのまま使える質問例 |
|---|---|
| 担当範囲の評価 | 「追加で担当した設定変更や試験は、どの評価項目に入りますか」 |
| 単価と給与の関係 | 「案件単価が変わった場合、給与へ反映するルールはありますか」 |
| 評価の時期 | 「今回の実績は、いつの査定で確認してもらえますか」 |
| 次の配属条件 | 「構築・設計に進むには、どの業務経験が必要ですか」 |
| 移るまでの段取り | 「後任への引き継ぎと、次の配属を検討する時期を確認できますか」 |
次の案件へ進むには、資格より先に担当業務を具体化する
監視・運用からなら、構築の一部を担当する
ネットワーク寄りなら、機器更改に伴う現行設定の調査、パラメータシート作成、設定変更、疎通試験などを候補にします。サーバ寄りなら、OS・サービス設定の確認、構築手順書の作成、バックアップや復旧試験などです。
実績の残し方は、インフラエンジニアの運用から構築へ|キャリアアップの実践法で具体例を整理しています。
構築からなら、設定を決める過程に参加する
すでに構築を担当しているなら、次は設計書の修正案や方式の比較に参加できるかを確認します。VLANの分割案、IPアドレスの割り当て案、障害時の通信経路、許可する通信の整理などです。
構築と設計の違いは、ネットワーク構築の年収は?設計・上流へ進むとどう変わるかで確認できます。
現場で増えた仕事を、自社の評価者へ渡す
記載例
これまでの担当:アラート確認と一次切り分け。
追加した担当:スイッチ更改に向けた現行設定の調査、パラメータシートの作成、試験結果の記録。
確認してほしい点:この実績が該当する評価項目と、次回の査定で扱うために必要な資料。
今のSES企業で続けるかは、具体的な条件で判断する
判断する基準は、「SESを続けるか、やめるか」という二択だけではありません。今の会社に、担当工程を広げる機会と、それを評価する仕組みがあるかを確認します。
| 確認できた状況 | 次に検討すること |
|---|---|
| 次の工程・時期・評価条件が具体的 | 社内で進むための準備と引き継ぎを進める |
| 案件はあるが、必要な経験が不足 | 担当する作業とレビュー役を決めて経験を補う |
| 実績はあるが、評価条件が不明 | 人事や上司に、条件と反映時期の説明を求める |
| 希望する工程の案件がなく、時期も未定 | 社外の募集条件と、社内で得られる経験を比較する |
よくある質問
案件単価が非公開のSES企業は、避けたほうがよいですか?
非公開という点だけでは判断できません。単価と給与の関係、評価項目、給与の見直し時期について、どこまで説明を受けられるか確認してください。
案件単価が上がったら、給与もすぐ上がりますか?
自動的に上がるとは限りません。自社の賃金規程や単価連動制度の有無、反映時期を確認してください。単価の変更日と給与の変更日は分けて確認することが大切です。
構築へ移ると夜勤が減ります。年収が下がるなら避けるべきですか?
手当を含む年収と、次に担当できる仕事を分けて比較してください。基本給、賞与、夜勤や残業による変動部分を確認し、そのうえで構築のどこまで担当できるかを見ます。
CCNAを取っても案件が変わりません。次はCCNPが必要ですか?
先に、次の配属で求められている条件を確認してください。足りないのが設定や試験の実務なのか、特定技術の知識なのか、案件の空きがないのかで対応が変わります。
SESから自社の情報システム部門へ移れば、年収は上がりますか?
働き方の呼び方だけでは決まりません。移った先での担当範囲と給与条件を確認してください。企画や設計を担当するのか、問い合わせ対応や運用が中心なのかを分け、今の仕事と同じ項目で比較することが大切です。
まとめ
SESで年収が上がらないときは、担当工程、案件単価、自社の評価制度を分けて確認します。仕事が変わることと、給与へ反映されることは別です。
明日やることは、最近増えた担当業務を一つ挙げて、上司へ「この実績は、どの評価項目に入り、いつ確認してもらえますか」と聞くことです。次の資格や勤務先を考える前に、今の仕事がどう評価されているかを確かめてください。


コメント
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[…] 技術面は現場担当者、給与や制度は採用担当者など、質問に答えられる相手が異なる場合もあります。その場で回答が難しければ、後日確認できる窓口を聞いておきましょう。SES企業の評価条件を整理したい場合は、SESで年収が上がらない理由と確認事項も参考になります。 […]